研究課題/領域番号 |
10J05187
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 円実 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | レチノイン酸 / アリルハイドロカーボン受容体 / レチノイン酸受容体 |
研究概要 |
アリルハイドロカーボン受容体(AHR)は重要な転写調節因子であり、パートナータンパク質であるAHR nuclear translocator(ARNT)と2量体を形成し、異物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)1A1などの転写調節を行う。私は、ヒト肝癌由来培養細胞株であるHepG2においてオールトランスレチノイン酸がAHR/ARNTの転写調節を抑制することを明らかにした。 1-100nMの低濃度のオールトランスレチノイン酸はヒトCYP1A1のエンハンサー/プロモーター領域における転写活性化能を抑制し、CYP1A1のmRNA発現量を大きく減少させた。また、このレチノイン酸による転写抑制作用はレチノイン酸受容体(RAR)の遺伝子ノックダウンおよびRARアンタゴニストAGN193109の添加によって打ち消されたことから、RARを介していると考えられた。さらに、クロマチン沈降法により1-100nMのオールトランスレチノイン酸がヒトCYP1A1のエンハンサー/プロモーター領域におけるARNTのリクルートを阻害することが明らかになった。 本研究により、AHRによる転写調節が低濃度のレチノイン酸により抑制を受けることが初めて明らかになった。また、これらの成果はAHR/ARNTとRARが機能的に相互作用することを示唆するものであり、いまだ不明なAHRの生理的作用についてさらなる理解を深めるのに大きく貢献すると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に従い、カロテノイドおよびレチノイン酸がAHRによる転写調節機構に与える影響について調べることができ、予想していたようにレチノイン酸によってAHRのパートナータンパク質であるARNTのリクルートが阻害されることを明らかにできたためである。また、研究を進めるうえで多くの新しい実験手技を身につけることができたことも大きな収穫の一つであった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、レチノイン酸がRARを介してAHR/ARNTによる転写調節を抑制することが初めて明らかになった。そこで、私は「RARとAHR/ARNTカスケードの間に相互作用が存在する」という仮説を立てた。今後はこの仮説を検証するために、共免疫沈降法などを用いてこれらのタンパク質の相互作用を調べる予定である。
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