研究概要 |
本研究課題ではではもやもや病の多発家系を用いて家族性もやもや病の責任遺伝子を特定すること、また同時に細胞生物学的解析と遺伝子改変動物の作成により遺伝子の機能を明らかにすることで発症機構の解明も行うことを目的とする。さらに特定した遺伝子について国際的な遺伝疫学研究を行い、遺伝予検査法を確立する。 東アジアにおいてもやもや病との強い相関が認められたRaptor遺伝子のrare variant、ss161110142(Environ Health Prev Med. 2010)周辺領域を対象にBACクローンを用いた全塩基配列で変異探索を行い、また次世代シーケンサーによる全遺伝子エクソンの塩基配列決定も併せて実施し、mysterin遺伝子(RNF213遺伝子、データベースとのORFの違いにより我々が命名)をもやもや病の感受性遺伝子として同定した(PLoS ONE, 2011)。生化学的な解析によりmysterinがATPase活性およびユビキチン化活性を同時にもつ、非常にユニークなE3リガーゼであることを証明した(PLoS ONE, 2011)。さらにノックアウトゼブラフィッシュモデルを用いて、mysterinが特に頭部における血管新生に重要な役割を果たすことを明らかにした(PLoS ONE, 2011)。日本、韓国、中国を対象に東アジアのもやもや病患者に共通する多型(p.R4810K)について一般人口における頻度を検討した結果、日本および韓国では人口の約3%、中国では0.4%が遺伝子キャリアーあることを見出し、東アジアにおけるキャリアーの人数は1千500万人と推測された。もやもや病はp.R4810Kを持つうちの300人に1人が発症することから、およそ5万人のもやもや病患者が東アジアに存在すると考えられる(Neurologia medico-chirurgica,in press)。
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