アミノ酸はタンパク質や核酸の材料やエネルギー源として必須な栄養素である。しかし一方で、アミノ酸はタンパク質合成、細胞増殖、オートファジー等を直接制御していることも明らかになっている。これらの制御は細胞内のアミノ酸が担っており、その量は主に細胞外からの取り込みと細胞内からの産生によって調節されている。近年、アミノ酸の細胞への薬理作用は腫瘍、肝疾患、生活習慣病等の疾患とも関連することが分かっており、細胞内のアミノ酸の動態や機能を解明することは応用医学的にも極めて重要な課題であると言える。しかしアミノ酸が細胞内にどれだけの量存在し、いつ、どこで、どのように変動しているかは全く不明である。そこで、本研究では細胞内アミノ酸レベルとその局在を可視化する方法を開発し、アミノ酸レベルの生理的・病態生理的状況下での変動を解明することを目的とする。細胞内アミノ酸レベルを可視化する方法の開発に当たり、FRET (fluorescence resonance energy transfer)による蛍光イメージング法を着想した。 本年度は当初の予定通り、細胞内アミノ酸レベルを特異的に感知するタンパク質を用いて1分子・2分子FRETセンサーの作製を試みた。まずFRET検出系を当研究室の蛍光顕微鏡を用い、カルシウムFRETセンサーであるCameleonをモデルとして確立した。その後アミノ酸レベルを感知する分子であるGCN2、ULK1、RAPTOR、4EBP1、eIF4Eの遺伝子クローニングを終え、全てについてCFP、VENUS分子との融合遺伝子の作製を終了した。現在これらの分子をHeLa細胞に導入し、FRET効率のスクリーニングを行っているところである。 さらに生体内でアミノ酸変化が見られる可能性のある現象として、水晶体分化時のオルガネラ分解にも着目し、解析を行った結果、アミノ酸産生オルガネラであるリソソームのオルガネラ分解への関与を見出した(学会発表あり)。今後は水晶体におけるアミノ酸レベルの変化の可視化も試みたいと考えている。
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