アミノ酸はタンパク質や核酸の材料やエネルギー源として必須な栄養素である。しかし一方で、アミノ酸はタンパク質合成、細胞増殖、オートファジー等を直接制御していることも明らかになっている。しかしアミノ酸が生体内の生理的な条件下でいつ、どこで、どのように変動しているかは全く不明である。本研究では細胞内アミノ酸レベルを可視化する方法を開発すると同時に、生体内の生理的アミノ酸変動モデルを確立することを目的とする。本年度も、アミノ酸検出プローブの作製を進めると同時に、生体内でアミノ酸レベル変化を伴うことが予想されるモデルとして水晶体の解析を行った。水晶体は単一の細胞(線維細胞)から構成されるため、組織内のアミノ酸変動解析に適した組織である。さらに水晶体は血管を持たないため、特にオートファジーによる細胞内からのアミノ酸産生が重要と考えられた。そこで水晶体特異的オートファジー(Atg5およびPik3c3)欠損マウスを作製し解析した結果、オートファジーは水晶体細胞内で恒常的に活性化しており、その作用は加齢性白内障の抑制に必須であること、さらに水晶体細胞の最終分化過程で起きるオルガネラ分解はオートファジーに依存しないことが明らかとなった。水晶体細胞内のアミノ酸レベルの変動およびオートファジーの寄与については今後解析予定である。今回明らかになったオートファジー非依存的オルガネラ分解系についても詳細な解析を進めており、水晶体内のアミノ酸ダイナミクスとの関連性も明らかにしたいと考えている。
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