研究課題
本研究は有用木本植物であるユーカリを対象として、その蒸散効率の制限要因の環境応答を調べることであった。具体的には、蒸散効率の重要な要因である膜のCO_2と水の拡散を制限しているアクアポリンという膜たんぱく質に注目して、アクアポリンの蓄積量を遺伝的に改良した植物を用いて実験を行った。本年度は、1)蒸散効率の制限要因である気孔コンダクタンス(gs)と葉肉コンダクタンス(gm)を、秒~分単位の高時間分解能で連続的に同時測定できるように実験システムのセットアップを行った。これによってgsやgmの短期的な環境応答の測定が可能になった。2)アクアポリンの蓄積量の変化によって、短期的な光環境の変化に対する、蒸散効率の制限要因であるgsとgmの応答速度の違いを調べた。1)の実験セットアップは中赤外分光レーザーCO_2同位体計というシステムを導入し、他機関の研究者と協力して行った。これによって、葉肉コンダクタンスと気孔コンダクタンスの同時測定を、秒単位で行えるシステムを確立した。このシステムによって環境の変化に素早く反応して変化するタンパク質や酵素の影響をとらえることが可能になった。また、2)の実験によってアクアポリンの蓄積量の違いによって、光変化に対する応答時間が異なることを示すことに成功した。これらの結果は植物の生産性を高めることや生態系内の水や炭素の循環に関しても重要な知見を与えると考えられる。
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New Phytologist
巻: (Online early)
Plant, Cell & Enviornment
巻: (受理済み)
Plant Biology
巻: 13 ページ: 115-125