研究課題/領域番号 |
10J05294
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山梨 裕美 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | チンパンジー / 個体差 / ストレス / コルチゾル / 野生下と飼育下 |
研究概要 |
本研究プロジェクトの目的は、チンパンジーにおける行動特性を客観的に評価する方法の確立と、その行動傾向の個体差と、主にストレスに関連した生理指標・遺伝的基盤との相関を検討することである。本年度の成果は主に2つある。1つ目ストレスの個体差を検討するために必須である、チンパンジーにおける毛髪サンプルからのコルチゾル分析方法の確立である。毛髪からのコルチゾル分析は、数ヶ月にまたがる長期的なストレスの測定に有効でありながら、チンパンジーにおいてはおこなわれてこなかった。そのため、ストレスの個体差を検討する研究の前に、測定方法の確立が急務であった。毛髪中のコルチゾルの抽出ができることが昨年度までにわかったため、今年はその妥当性を評価するためにこれまでにすでに妥当性が確認されている糞中コルチゾルとの相関を検討した。結果、毛髪中コルチゾルと糞中コルチゾルには有意な相関がみられた。また、毛髪中コルチゾルの再現性は高く、行動指標との相関もあった。その成果は、第14回SAGAシンポジウムにて発表した。今後、この指標を用いて、チンパンジーのストレスの個体差について検討を進めていく予定である。 本年度2つ目の成果は、野生チンパンジーにおけるデータ収集である。現在特別研究員の研究テーマのもと、それぞれのもつ性格により新規の環境への適応の仕方が異なるのではないかという可能性も検討している。飼育チンパンジーが、その環境に適応しているかどうかというのはいくつかの指標を併せて検討する必要がある。環境に適応できていないということは、ストレスが高くなる。それはチンパンジーの自然な行動の表出を抑制すると考えられている。しかし自然な行動というのを評価するためには、野生チンパンジーの行動を参照する必要がある。また、野生チンパンジーのストレスについて検討し、飼育チンパンジーとの差を比較することは環境の違いがチンパンジーのストレスに与える影響を検討することにつながると考えられた。そこで今年度、ギニアのボッソウにおいて野生チンパンジーの行動調査とコルチゾル分析用のサンプル収集をおこなった。来年度に収集したサンプルを分析し、これらの可能性を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、コルチゾルを毛サンプルより測定するための実験系の確立が達成できた。行動のデータ収集・さらなるサンプル収集もすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、これまで収集した、チンパンジーの行動とストレスの生理学的指標の分析を続けていく予定である。発展をうながすために、学会等でも積極的に発表をして、内容を深める努力もおこたらないようにする。
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