血液幹細胞では、細胞内に浸潤する不要な化学物質(Hoecnst等)を積極的に細胞外へ汲み出す細胞群(Side Population細胞:SP細胞)が存在し、幹細胞としての機能を強く有すると言われている。そこで、同様のことが精子幹細胞で認められるかを検討した。その結果、ex vivoでの精子幹細胞とin vitroのGS細胞のどちらでも、SP細胞の出現自体がstochasticであり、汲み出すためのATPポンプをコードする遺伝子(Abcg2)を強制発現させたことによるGS細胞の幹細胞能上昇は認められなかった。このことから、SP細胞の概念はGS細胞には当てはまらないと言える。 また、表面抗原による精子幹細胞の濃縮法についても検討した。これまでのトリブシンによる細胞単離法ではあまり濃縮に適する表面抗原を同定できなかった。報告者はその原因がトリプシンによる表面抗原自体の破壊にあると考え、トリプシンを使わずに細胞を単離するバッファーを調合することに成功した。このバッファーはトリプシンを用いる場合に比べ単離能は若干劣るものの、ex vivoでの細胞単離にも十分使用可能である。また、FACS法などにより、トリプシンを使用していては発現を認めることができなかったNectin3をはじめとする種々の表面抗原が発現していることを認めることができた。
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