研究課題/領域番号 |
10J05306
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石井 慧 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 精子幹細胞 / Fgf2 / MAPK / GS細胞 / 生殖細胞腫 |
研究概要 |
精子幹細胞の自己複製能を司る分子機構は、精子幹細胞の脱分化によって起こると考えられる奇形腫を構成する細胞の増殖能と深く関わるであろうと予想されるものである。精子幹細胞を長期培養することで得られるGS細胞株は培養条件下において、GDNF (Glial cell-Derived Neurotropic Factor)とFGF2 (Fibroblast Growth Factor 2)の2因子依存的に増殖する。このうち、GDNFはAkt-PI3K (Phosphatidyl-Inositol-3 Kinase)シグナルを介してGS細胞の増殖と維持を調整することは本研究室の以前の研究により明らかになっていた。しかし、FGF2に関する分子機構は不明であった。 そこで、今年度は生殖細胞の増殖に着目し、その分子機構を解明するという計画に従いFGF2シグナルとGS細胞増殖との関連を中心に研究を進めた。 その結果、FGF2はMAPKシグナルを活性化し、生殖細胞の増殖に重要であるとされる転写因子であるEtv5の発現、さらにはEtv5によるBcl6bの発現を促進させることが判明した。また、MAPKを常時活性化させたGS細胞や、Etv5あるいはBcl6bを過剰発現させたGS細胞は、FGF非存在下でも長期培養できることが明らかとなった。さらに、MAPKを常時活性化させた場合とBcl6bを過剰発現させたGS細胞は、精細管内に移植することによって生殖細胞腫が形成された。以上のことから、FGF2-MAPK-Etv5-Bcl6bシグナルカスケードがGS細胞の増殖に大きく寄与していることを証明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子幹細胞の自己複製能について、増殖因子の1つであるFgf2がどのように関与しているかという分子機構を明らかにしたことは、全体の目的である奇形腫を形成する細胞の増殖にも大いに関与していることが期待され、その進展が認められたため。
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今後の研究の推進方策 |
奇形腫形成の要因となる刺激について、DNAに損傷が起きた際の精子幹細胞やGS細胞の反応を見ることで、奇形腫形成における分子機構の一端を解明することができると思われるので、放射線照射実験を加え、DNA損傷によるストレスへの反応を他の幹細胞や体細胞と比較することを試みる。
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