研究課題/領域番号 |
10J05408
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
佐々木 拓哉 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別研究員(PD)
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キーワード | 神経生理学 / イメージング / 海馬 / ニューロン / 活動電位 / アストロサイト / 自発活動 / カルシウム |
研究概要 |
ニューロンでは、細胞体で脱分極が起こった際、活動電位の幅が増大するが、この増幅がどのように軸索を伝播していくかを解析した。海馬CA3野の錐体細胞より軸索パッチクランプ記録を行い、軸索の長さと分枝数に依存して、伝播する活動電位の幅が減衰して正常に戻ることを見出した。この結果は、軸索からのカルシウムイメージングでも確認された。さらに、シナプス結合ペア細胞からの同時パッチクランプ記録を行い、プレ細胞の脱分極が、近傍のポスト細胞にのみシナプス増強という形で伝播することを見出した。これは軸索の活動電位幅の増大によるものと推測された。本研究成果はJournal of Neuroscience誌に掲載された。 また、蛍光電極を用いた軸索パッチクランプ法を詳細に記述した論文を執筆した。本法は昨年度のサイエンス誌に掲載されたものであり、軸索の電気的活動を記録するための有用な方法であると期待される。本研究成果はNature Protocols誌に掲載された。 さらに、前年度所属した埼玉大学との共同研究により、高感度の蛍光カルシウムセンサータンパク質の開発に成功し(論文投稿中)、また、生理学研究所においては、光感受性チャネルタンパク質を発現する遺伝子改変動物の作製に取り組んだ(論文投稿中)。これらは近年隆盛の光遺伝学(optogenetics)に相当する研究である。研究論文は近日発表予定だが、既に学会シンポジウム等では幾度か講演し、研究の重要性は認識されつつある。今後は、得られたツールを、自らの研究課題へと適用し、新たな脳回路の計算原理を明らかにしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と比較すると、論文の発表数は予想以上であり、進展状況は順調といえる。今後の課題としては、in vivoの生体動物からの脳活動記録を確立する必要がある。このような現状から、自己評価はおおむね順調に進展しているという判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまではスライス標本を用いた実験を主としてきたが、最終的な研究課題の達成のために、生体動物を用いたin vivoイメージングと電気生理記録の達成を試みる。生理学研究所では、生体動物の手術に関する技術が大変成熟しているため、これらの技術を参考にし、早期の技術確立に努める。技術が確立された後には、遺伝子改変動物など病態モデルマウスを用いて、細胞活動のパターンが、正常の脳とどのように異なるのか比較検討する。
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