まず、銀河団の形状を実際にXMM-Newton衛星で数十サンプルにわたって計測した。これはガスハローの投影された楕円の軸比を求めることに相当するが、これが現在の標準的な構造形成モデルでおこなわれたN体シミュレーションから得られる暗黒物質ハローに静水圧平衡を仮定した簡単なモデルで求めたガスハローの投影軸比分布とよく一致した。すなわち、現在の観測データが冷たい暗黒物質宇宙モデルから予言される形状分布と無矛盾であることを確かめた。 また銀河分布からえられた大規模構造フィラメントを新しい手法であるスケルトン法で同定し、これに基づき、フィラメントの交点をすざく衛星で観測することで、新しい銀河群を発見した。この新しい銀河群は複数のX線ピークを持ち、さらに温度分布に高温領域をもっている。これは衝突の痕跡であり、この規模のハローとしては非常にめずらしいものである。すなわちフィラメント環境下で、活発にハローの成長力桁われていることを観測的に示した。今回の結果は、銀河分布に基づいて、このようなミッシングバリオンの一部を検出したことに相当する。すなわち、すざく衛星と銀河分布を適切に用いることで、これまで見つかっていなかったような低温/低輝度のバリオンを発見できることを示したと言える。 さらに今年度はあらたな試みとして、地球型系外惑星の反射光直接撮像における、表面地図と赤道傾斜角の推定方法について新たなモデルを構築した。これは直接撮像で惑星の公転と自転により、観測される光量に惑星表面の情報が含まれていることを利用したものである。コンピュータートモグラフィーの理論を応用して、年間のライトカーブから、惑星表面の地図を引き出す理論的枠組みを構築した。さらに観測可能性について検討し、現在、検討されている衛星計画でも地球から5-10pcという近傍にいる惑星ならばこの方法が適用可能であることを示した。またこの理論では他の方法では推定することが非常に困難である赤道傾斜角の推定が可能であるということをしめした。
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