本年度は、前年度につづきフィラメントジャンクションのデータを新たに取得し、解析を行なった。その結果、新たに二例目の衝突銀河群を発見した。この銀河群はすでに発表済みのSuzaku J1552よりさらに表面輝度分布が非一様であり、衝突中に在ると考えられる。ただし温度分布には顕著な衝突の傾向を観測できなかったので、現在、高角度分解能のChandraでの観測を提案中である。このようにフィラメントジャンクションでは活発なハロー形成が行なわれているという仮説を強化するような結果を本年度は得られた。 また衝突銀河団CIZA 2242.8-5301については、明確な温度ジャンプ構造が観測され、Akamatsu & Kawahara (2013)としてPublication of Astronomical Society of Japanに出版された。この結果はその後に出版されたXMM-Newtonなどの観測によっても確かめられ、現在の所、最も明確なショック構造を検出できたと言える。これによりRadio relicが衝撃波面に対応しているという仮説はかなり強固なものとなったと言えよう。 また今年度は、宇宙流体シミュレーションにより銀河団の静水圧平衡がどれだけなりたっているのかという研究の共同研究にも参加し、Suto et al.として結果は出版された。 さらに前前年度からあらたに始めた系外惑星のキャラクタリゼーションについては、地上望遠鏡による酸素線の検出可能性を示したものと、ホットジュピターの新しいスピン推定法を提案したものの2本の主著論文が出版された。この研究は、観測的宇宙論的な発想を太陽系外惑星にも自然に応用したものであり、必ずしも当初の目的とは合致しないが、実り多い副産物であったと言えよう。
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