研究課題/領域番号 |
10J05524
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
君嶋 泰明 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 現象学 / ハイデガー / 存在論 |
研究概要 |
当初の研究計画に記載した通り、ハイデガー哲学の心の哲学や関連諸分野に対する現代的意義を明らかにすることを目標にしつつも、まずは彼の哲学に対する徹底した理解を得ることが先決と考え、前年度に引き続き、彼の最初期から『存在と時間』に至るまでの思索の歩みを辿り直し、解釈し、そのアクチュアリティを見定めるということを行ってきた。 具体的には、いわゆる「初期フライブルク講義」という、ハイデガーが『存在と時間』の構想段階にあたる1919-23年に行った講義録を網羅的に解釈することを通じて、いかにして彼が同書の「存在の意味への問い」という独特の問題設定に到達したのかということを明らかにすることが目指された。その成果は、彼の独自の術語である「意味」や「地平」、また彼の哲学の方法である「形式的告示」が持つ、これまで十分に論じられてこなかった含意を明らかにするというかたちで、一本の学会発表、および二本の学術論文として発表された。 当該年度の成果は、ハイデガーの代名詞ともいうべき「存在の意味への問い」の複雑で動的な構造を解明するという、ハイデガー研究における最重要課題の一つでありながらこれまで研究者たちが必ずしも十分に取り組んでこなかった課題への寄与を、それも彼の最初期の思索を辿り直すことを通じて目指している点で、この分野における十分な意義と重要性を持っているといえる。しかし当該年度の成果は、いまだ途上にある本研究全体の一部分であり、その意義と重要性は、本研究が完成した暁に、十分に明らかになるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に記した研究遂行上の三つの段階のうち第一の基礎的な段階(ハイデガー解釈)に本研究はとどまっているが、それは本研究の遅れを意味するのではなく、むしろ、安易に次の段階に進まず、この段階の研究に十分な時間を割くことこそが、結局は当初の目論みを達成するためのもっとも堅実で確実な方策だと自覚されたからである。このように捉え直された研究全体の構想の枠内では、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、当初の研究計画に記した基礎的段階(ハイデガー解釈)にむしろとどまることこそが、結局は実りある研究につながると考え、研究計画は変更された。今後はこの方針で研究を推し進め、最終的には、『存在と時間』にいたるまでのハイデガーの思索の歩みを、本研究がこれまでに発表してきた独自の成果を含めたかたちで再構成し、さらなる中間成果を学会発表や論文投稿というかたちで公にし、それらをもとに博士論文を執筆する予定である。
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