研究課題/領域番号 |
10J05542
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 泰之 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | bHLH / イソキノリンアルカロイド / オウレン / ハナビシソウ / 転写制御 |
研究概要 |
1. CjbHLH1のイソキノリンアルカロイド生合成系遺伝子発現における機能解析に関する研究成果、ならびにCjbHLH1のメチルジャスモン酸(MeJA)に対する応答性と他のアルカロイド生合成に関わるbHLH転写因子との比較を行い、国際誌に公表した。 2. ベルベリン生合成系の新規遺伝子発現調節因子・転写因子の探索のために、MALDI-TOF-MSを用いた解析の条件検討を行い、解析に必要なタンパク量等を把握した。その結果をふまえ、共免疫沈降やクロマチン免疫沈降の実験系の改善を現在進めている。また、タンパク質の同定に必須であるオウレンESTをデータベースに登録するとともに、既に見出した転写因子候補遺伝子についてその発現をベルベリン高生産性培養細胞株(156-S株)と低生摩性培養細胞株(CjY株)において半定量PCR解析により比較した。その結果、156-S株で顕著に発現量が高いもの、CjY株で顕著に発現量が高いものがいくつか見られた。 3. sGFPおよびsGFP-cjbHLH1を導入したハナビシソウ培養細胞株を複数確立した。今後、これらの株を用いたCjbHLH1のin vivoにおける機能解析やクロマチン免疫沈降実験などを予定している。また、ハナビシソウの2つのcjbHLH1ホモログ、EcbHLH1-1、EcbHLH1-2について、EcbHLH1-1特異的、EcbHLH1-2特異的、EcbHLH1-1,EcbHLH1-2に共通のRNAiベクター、EcbHLH1-1、EcbHLH1-2それぞれにSRDX配列を付加したキメラリプレッサー(EcbHLH1-1-SRDX、EcbHLH1-2-SRDX)を導入したハナビシソウ培養細胞株も確立した。なお、ハナビシソウ植物体の各組織におけるEcbHLH1-1、EcbHLH1-2の発現パターンの解析から、両者の発現パターンが異なることが明らかとなった。また、EcbHLH1-1、EcbHLH1-2はともにMeJAに対して応答することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベルベリン生合成系における新規遺伝子発現調節因子・転写因子の探索では、まだ新しい因子を得るまでには至っていないが、MALDI-TOF-MSを用いた解析やESTの情報整備等、必要な解析のための準備は順調に進んでいる。また、ハナビシソウ形質転換体を用いた解析についても、形質転換体の作出はおおむね完了しており、CjbHLH1ホモログであるEcbHLH1についても解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、質量分析計や一過的RNAi系を用いてベルベリン生合成系における新規遺伝子発現調節因子・転写因子の単離を試みる。時間があれば、CjbHLH1のMeJAに対する応答性を考慮し、ジャスモン酸シグナル伝達系に関わるMYC2やCOI1、JAZなどとCjbHLH1との関わりについても解析したいと考えている。また、ハナビシソウの形質転換体については導入遺伝子の発現を確認し、生合成遺伝子の発現解析やアルカロイドのプロファイル解析などを行う。
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