研究課題
1)ナノゲルを用いた効果的な経鼻肺炎球菌ワクチンの開発アジュバント不要な新規抗原デリバリーシステムであるナノゲルを用いた経鼻ワクチンの有用性を検討するため、抗原として肺炎球菌表面タンパクA(PspA)をナノゲルに内包させたもの(ナノゲル-PspA)を経鼻投与した時の、肺炎球菌に対する免疫誘導効果について解析した。その結果、ナノゲル-PspAの経鼻投与により、高レベルの抗原特異的IgGを血清中に認め、また、鼻腔や気管支中に抗原特異的分泌型IgA(SIgA)を認めた。これらの抗体レベルはコントロールの粘膜アジュバントコレラトキシンを用いた場合とほぼ同程度であった。ナノゲル-PspAを経鼻投与したマウスは、致死量の肺炎球菌感染に対して抵抗性を示し、気管支粘膜における肺炎球菌数は未感作マウスと比較して極めて小さく、また、肺実質への肺炎球菌の侵入は認められなかった。以上の結果は、ナノゲルを用いたアジュバントフリー経鼻ワクチンの有効性を強く示すものであり、昨年8月に神戸で開催された第14回国際免疫学会においてポスター発表を行った。2)鼻粘膜組織におけるリンパ球が発現するケモカインレセプターのスクリーニングナノゲルを用いてワクチン抗原を経鼻投与したマウスにおいて鼻粘膜組織へのIgA産生細胞の遊走が認められた。そのメカニズムを明らかにする目的で、これらの細胞に発現している鼻粘膜指向性関連分子のスクリーニングをリアルタイムPCRを用いて行った。その結果、細胞の遊走に関与する分子であるケモカインレセプターのうち、CCR10およびCXCR2と脂質メディエータースフィンゴシン-1リン酸のレセプターであるS1PR4の発現上昇が認められた。さらに、百日咳毒の投与によりこれらのレセプターシグナルを阻害したところ、鼻組織へのIgA産生細胞の遊走がブロックされたことから、これらレセプターの関与が示唆された。
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Journal of Immunology
巻: 186 ページ: 4253-4262
Nature Materials
巻: 9 ページ: 572-578