フェルミ原子気体のBCS-BECクロスオーバーと、強い相互作用に起因する擬ギャップ現象について解明するために、当該年度は一様系およびトラップ系フェルミ原子気体の1.微視的、2.熱力学的な物理量を計算し、議論した。 1.本研究の目的の一つである擬ギャップ現象の存在を一様系において示した。特に、状態密度およびスペクトル強度の温度・相互作用依存性を解析することによって、擬ギャップ現象と超流動性が競合する性質を持つことを示した。さらに、実験系と直接比較可能なトラップ系における解析を行った。その結果、我々の数値計算結果と実験結果が定量的に一致することを示すことに成功した。さらに、トラップポテンシャルによる非一様性の影響で、擬ギャップ現象も非一様に生じることがわかった。これに関連し、我々は一様系およびトラップ系において、擬ギャップ現象を考慮したBCS-BECクロスオーバーにおける相図を提案した。この成果は、本質的に多体効果が重要な本系を理解する上で重要であり、当該分野で初めて示されたものである。 2.当該分野で盛んに研究されている、気体の熱力学量について議論した。特にトラップ系フェルミ原子気体の局所的な圧力の計算結果について、いわゆるユニタリティ領域において、実験結果を定量的に説明することに成功した。現在、スピン帯磁率や圧縮率などの熱力学量の解析を行い、本質的な多体性を有する擬ギャップ現象について、さらなる理解を目指している。 このように、様々な物理量を解析し実験の比較を行うことは、現在、我々が用いている理論の妥当性および限界について、さらなる知見を得る上でも重要である。
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