研究課題/領域番号 |
10J05623
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 征央 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC1
|
キーワード | 線虫C.elegans / 温度走性 / 記憶 / CREB |
研究概要 |
線虫C.elegansが示す温度走性行動を指標として、記憶形成に関わる分子および神経基盤を解明することを目的に、線虫を用いた分子遺伝学的解析を行った。これまでに、本研究から、動物の記憶形成に重要なCREBのオルソログCRH-1が温度走性行動に重要な役割を果たしている可能性が示された。crh-1を欠損した変異体は温度走性において顕著な異常を示し、また、この変異体の温度受容ニューロンAFDでcrh-1 cDNAを発現させた場合のみ、この異常がほぼ完全に回復した。また、カルシウムイメージングにおいて、AFDの飼育温度に依存した反応を観察した結果、crh-1変異体では、この反応に異常が見られた。これらの結果から、温度走性行動においてCRH-1がAFDニューロンのみで機能すること、さらには、AFDニューロンがCRH-1に依存した温度記憶を保持している可能性が示唆された。本研究は、単一細胞が担う記憶のメカニズムを分子遺伝学的に解明するための、極めてシンプルなモデルシステムを提唱するものであり、記憶形成に関わる分子神経基盤を解き明かす鍵となることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線虫C.elegansが示す温度走性行動において、動物の記憶に重要であることが知られる転写因子CREBのオルソログcrh-1が単一の神経細胞で機能していることを明らかにした。ここまでの研究成果について論文発表を行った(Nishida et al.,EMB O rports,2011)。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでにマイクロアレイ解析の結果から、CRH-1の下流遺伝子の候補を単離した。中でもCRH-1および温度変化の両方に依存して発現量が変化していたcatp-3についての変異体がcrh-1変異体と同様の温度走性行動の異常を示した。そこで、(1)細胞特異的レスキュー実験による、catp-3がAFDで機能する可能性の検証、(2)catp-3の細胞内局在の同定を行う。また、catp-3はNa^+トランスポーターとして機能することが予測されるため、(3)in vitro系でのNa+流入への関与の検討、(4)in vivoイメージングを利用した膜電位の制御の検討を行う予定である。
|