研究概要 |
脳の進化的差異が発生初期の遺伝子発現の違いにより生み出されるかどうかを解明するため、脊椎動物間の視床上部で異なる発現パターンを示す分泌性シグナル分子Fgf8について、マウス、ニワトリ胚間での比較解析を行った。東京工業大学岡田典弘教授との共同研究により、哺乳類特異的な間脳Fgf8のエンハンサーASO71ノックアウトマウスを入手し、解析に用いた。このマウスの間脳」Fgf8の発現パターンをニワトリのものと比較すると、間脳背側で高い相同性を示し(Nakanishi et al. 2012、研究成果)、マウス、ニワトリ間で視床上部の発現に差異の見られたWnt8bも、ニワトリ様の発現パターンを示す事が明らかになった(Nakanishi and Suzuki-Hirano et al., 投稿準備中)。 一方、間脳Fgf8は視床発生に機能するが、異所的なFgf8の強制発現により時期依存的にその発生運命が変化すること、また異所的なFgf8への応答に対してマウス、ニワトリ間でそのタイミングに差があることから、発生中のマウス視床におけるFgf8の下流分子に着目した。まず、マウス視床へのFgf8強制発現を行い、Fgf8の下流で働く遺伝子をGeneChip解析を用いて同定した。さらに、Fgf8強制発現時の変化について、同定された遺伝子およびFgf8下流分子の発現パターンをGeneChip解析を用いて継時的に調べた。すると、Fgf8強制発現後の視床では、時期依存的なFgf8下流遺伝子の継時的発現変化が起こり、その結果、視床の発生運命が制御されることが示された(Suzuki-Hirano and Shimogori, "Temporal and spatial regulation of Fgf8 downstream genes is required for thalamus development', 投稿準備中)。
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