研究課題/領域番号 |
10J05731
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤井 俊 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 虚二次体 / z^2_p拡大 / Greenberg予想 |
研究概要 |
本年度は、まず、昨年度得られていた結果の改良し次の結果を得た。kを虚二次体、pを奇素数とし、pはkで分解するとする。DをkのZ^2_p拡大K/kでの分解群とする。kの最大不分岐アーベルp拡大はkのZ^2_p拡大体Kに含まれ、さらに、kの円分Z_p拡大のλ不変量は2で、DはGal(K/k)の正規部分群と仮定する。このとき、任意のkのZ_p拡大に対してλ不変量は[Gal(K/k):D]以下であり、μ不変量は0となる。昨年度は、上記定理の仮定の下で、任意のkのZ_p拡大のμ不変量が0となることを示していたが、さらにλ不変量が具体的な上界[Gal(k/k):D]で押さえられることを示すことができた。この結果の証明は、ある具体的な2変数のべき級数が、Z^2_p拡大K上の最大不分岐アーベルpro-p拡大L/Kのガロワ群Gal(L/K)を消すということを示すことによってなされる。虚二次体上のGreenberg予想は、Gal(L/K)が、互いに素な二つのべき級数で消される(pseudo-null)、というものであるが、具体的な零化元の存在はGreenberg予想の研究において重要なものであるように思われる。再びpを奇素数、kを虚二次体とし、さらにpはkで二つの異なる素イデアルP,P^1に分解するとする。M_P/KをPの上にあるKの素点を除いて不分岐な最大アーベルpro-p拡大とする。このとき、M_P≠Lならば、Gal(L/K)が非自明なpseudo-null部分加群を持つことを確かめた。Gal(L/K)が非自明なpseudo-null部分加群を持てば直ちにGreenberg予想が確かめられる場合があり、また、この命題は古来よく研究がなされているM_Pと、Greenberg予想の対象であるLとの関連を与えていることから、重要なものであると思われる。この命題と同様な主張は奇素数pが完全分解し、Leopoldt予想が成立する総実体でも成り立つことが知られており、虚二次体においても類似する現象が起きているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Greenberg予想の対象である不分岐アーベル拡大のガロワ群が非自明なpseudo-null部分加群を持つことと、古来よく研究がなされているアーベル拡大の性質との関連の一端を見出すことができた。また、Greenberg予想の研究から派生した岩澤不変量の研究において、ある場合に不分岐アーベル拡大のガロワ群の具体的な零化元を見出すことができ、予想外の結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は虚二次体の上で行ってきたが、研究を進めるうちに、奇素数pが完全分解する虚二次体と総実体とで共通する性質を持つように見受けられ、虚二次体だけではなく総実体の研究も並行して行うことが重要であるように感じられた。この視点から、総実体で知られている結果を虚二次体の上で考えることもまた大事なことと思われる。
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