本年度は、Greenberg予想について、次の結果を得た。 定理.kを次数が4以上の虚アーベル体とし、pをkで完全分解する奇素数とする。もし、kの類数がpで割れず、kの最大総実部分体の岩澤不変量が全て0であれば、kとpについてGreenberg予想が成り立つ。 kが虚二次体の場合はMinardi氏により、また、kが虚4次アーベル体の場合には伊藤氏によって結果が得られていたが、当該研究者によって4次以上の虚アーベル体に対しても同じ結果が得られることが示された。虚アーベル体で奇素数が完全分解するとき、もっとも基本的と思われる状況でGreenberg予想が成立することが、上記の定理によって初めて確かめられた。そのため、Greenberg予想の研究において上記の定理は大きな意義を持っていると当該研究者は考えている。またこの結果の非アーベル岩澤理論への応用も得られている。 また、尾崎氏の結果により知られていた、総実代数体のZ_p拡大上の非自明な分岐の存在と、不分岐岩澤加群の非自明な疑零部分加群の存在の同値性が、虚二次体上のZ_p^2拡大でも成り立つことを確かめた。非自明な不分岐拡大の存在は、ゼータ値が与えられた素数で割れるかどうかということと関連しており、「ゼータ値が素数で割れれば、非自明な分岐が起こる」ということを示すことができれば、岩澤加群の非自明な疑零部分加群の存在を確かめることができる。Greenberg予想の研究において、非自明な疑零部分加群の存在すら自明なことではなく、上記の括弧内の主張の考えることは、今後のGreenberg予想の研究において重要であると考えられる。
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