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2011 年度 実績報告書

RhoファミリーG蛋白質活性化の可視化と制御による管腔構造の形成・癌化機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 10J05775
研究機関京都大学

研究代表者

八木 俊輔  京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード上皮形態形成 / 管腔 / Racl / FRET / 癌 / 過形成 / Chn2 / chimaerin
研究概要

[背景]上皮細胞の癌化に伴い生じる管腔構造の形態異常がどのようにして起こるのか不明な点が多いが、そのメカニズムの理解は腫瘍の悪性化を抑制する手段を見いだす一助となる。本研究では管腔の上皮極性の破綻にRhoファミリーG蛋白質の活性パターンが関与するという仮説を立て、これをFRETイメージングと活性制御法を組み合わせて検討してきた。去年度までの研究で、管腔を構成するMDCK細胞の細胞膜におけるRac1の活性は管腔が成熟するにしたがって内腔ドメインで低下すること、ならびにこの活性の低下を妨げることで上皮極性の破たんにより過形成様の形態異常が引き起こされることを明らかにした。
[結果概要]本年度は上述のようなRac1の活性分布を実際の生体内で確認し、また内腔ドメインでRac1を不活性化する因子の候補を明らかにした。
[結果]まずRac1のFRETバイオセンサーを発現するマウスを用いることで、顎下腺、精嚢、胚の肺において内腔ドメインでRac1が不活性化することを明らかにした。しかし申請書で注目するとしていた乳腺ではRac1の活性は均一であった。次に内腔ドメインでRac1を不活性化する因子を明らかにするために、MDCK細胞の細胞膜におけるRac1の活性が管腔が成熟するにしたがって内腔ドメインで低下する現象に注目した。このRac1の低下は後期にRac1を不活性化する因子としてRac1特異的なGTPase activating protein (GAP)の発現量が亢進する可能性を示唆している。そこでマイクロアレイを用いる事で管腔の培養初期と後期で遺伝子の発現量を比較し、後期に発現量が亢進するRac1特異的なGAPを検討した。その結果、Rac1特異的なGAPであるChn1とChn2の発現量の亢進が明らかになった。shRNAによる実験の結果、Chn1の発現阻害は管腔の形態に影響を及ぼさなかったのに対し、Chn2の発現阻害は過形成様の形態異常を示した。またGFP融合型Chn2が内腔ドメインに局在する事、Chn2のC1ドメインが結合するdiacylglycerolが管腔の内腔ドメインに集積する事が分かった。以上の事からChn2が管腔の内腔ドメインに局在する事で、Rac1が不活性化されていることが示唆された。
[重要性]本年度の結果から、実際の生体内でもRac1の活性が内腔で低下している事、管腔におけるRac1の活性パターンを制御している因子が存在する事を明らかにした。実際の癌化過程で生じる管腔の形態異常に関してもその活性パターンの破綻が関与している可能性がある。これらの知見は新たな病態のメカニズムの解明や創薬ターゲットの発見につなげることができると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3年目に予定していた実際の生体内でのRac1の活性分布の解明がすでに完了した。しかし申請書で注目するとしていた乳腺組織ではRac1、Cdc42の活性分布は均一であり、当初予想していたなんらかの特徴的な活性分布は存在しないことが分かった。そのため乳腺組織を研究対象とせず、培養モデルを用いた活性分布を制御する因子の探索を行うという別の方針をとった。

今後の研究の推進方策

本研究課題の「Rac1の活性分布自体がどのように病態に関与するかを明らかにする」という目的は現時点である程度達成された。前項目で述べた理由から計画立案当初に研究対象とする予定であった乳腺に関する実験を取りやめる事を決定した。一方で今後は、本年度までの研究で明らかになった「Rac1の活性化が管腔の形態異常を引き起こす」という現象を防ぐ化合物を見いだす方針をとる。Rac1の活性化を抑制する化合物が得られれば、癌化過程で起こる形態の異常を防ぐ事が出来ると考えられる。最終年度は、このような化合物を見つけ出すためにFRETイメージングを用いた低分子化合物のスクリーニング手法の確立を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Suppression of Rac1 Activity at the Apical Membrane of MDCK cells is Essential for Cyst Structure Maintenance2012

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yagi, Michiyuki Matsuda, Etsuko Kiyokawa
    • 雑誌名

      EMBO Reports

      巻: 13(3) ページ: 237-243

    • DOI

      10.1038/embor.2011.249

    • 査読あり
  • [学会発表] 管腔におけるアピカル膜でのRac1活性の抑制は上皮構造の形態維持に必要である2011

    • 著者名/発表者名
      八木俊輔、松田道行、清川悦子
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2011-12-01

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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