研究課題/領域番号 |
10J05808
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小野寺 丈尚太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 沈降粒子フラックス / 珪藻 / 珪質鞭毛藻 / 北太平洋 / ベーリング海 / 北極海 / セディメントトラップ / 生物海洋学 |
研究概要 |
1.北極海の棚研究 : 平成23年度に北極海Northwind Abyssal Plainで投入したセディメントトラップ係留系の回収と再設置に成功した。昨年夏から12カ月にわたってセディメントトラップで捕集された試料も無事回収し、試料の全粒子束測定、無機/有機炭素および窒素の含有量と安定同位体比測定を行った。全粒子束は、基礎生産が活発な初夏だけでなく11月頃にも高かったことが分かった。無機・有機炭素の含有量は概してベーリング海や北太平洋亜寒帯よりも少なかった。また、有機炭素/有機窒素比および炭素同位体比の結果から、陸起源有機物の直接的な混入がほとんど見られないことも分かった。また、夏の試料にはゼラチン質動物プランクトンが多量に含まれていた。ベーリング海や北太平洋亜寒帯では、有機炭素の深層への輸送(生物ポンプ)に対する珪藻の寄与が大きいが、本試料ではゼラチン質粒子による寄与が高かった可能性がある。なお、昨年投入したもう一係留系の回収は、現場が海氷に厚く覆われていて回収作業ができなかったため、翌年度に再挑戦する。 2.ベーリング海および北太平洋亜寒帯における珪藻沈降粒子フラックスの長期時系列錫測 : 1990年代と2000年代では、珪藻沈降粒子の群集組成の傾向が異なっていたことが分かってきた。1992-1997年にかけては、Station SAの珪藻フラックスとPacific Decadal Oscillationに一定の関係が見られたが、2000年代に入ると関係性が見られなくなった。原因など結果の解釈はまだ不十分であり、今後の課題である。 3.北西太平洋亜寒帯Station K2および亜熱帯St. S1における珪質鞭毛藻群集解析 : 両観測点の各季節に得られた海水試料について珪質鞭毛藻の生群集を解析した。その現存量や群集組成は、両海域における表層水塊の特徴的な違いを反映していた。Station S1の群集鉛直分布は、栄養塩鉛直分布に対応して表層と亜表層で優占種が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた北極海観測は、海氷に覆われた一部を除き予定通り順調に終えた。試料分析は、翌年度に予定していた北極海試料の化学分析を本年度に優先したため、当初予定した分析ができなかった試料が一部残ったが、翌年度の作業で挽回できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
翌年度も引き続き、当初の計画に沿って観測航海と試料分析を行う。また、これまでに得られた結果について論文化を進める。
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