研究課題
最終年度である本年度は、新規に開発したGeCu_2Te_3(GCT)三元化合物とこのGCTを含むGeTe-CuTe擬二元化合物の諸特性について体系的に調査した。またGCTと既存材料であるGSTを組み合わせたメモリデバイスを作製することで、電流印可による多値記録動作を試みた。これまでの研究から、GCTは低融点を有するためアモルファス化に伴う消費電力が低く、さらに結晶化温度も高くアモルファスの安定性も高いことがわかっていた。一方、メモリ用材料として用いる場合、高速書き換え動作を実現するために結晶化に要する時間も重要なパラメータになる。そこでレーザー照射装置でGCTアモルファス薄膜の結晶化、アモルファス化時間を測定した。GCTは高速結晶化材料として知られるGSTと同等の結晶化時間を示し、またアモルファス化はGSTに比べ時間、電力ともに半分程度と、レーザー試験においても低消費電力であることが確認された。これらの結果から、GCTは高耐熱性、低消費電力、高速結晶化という優れた特性を併せ持つ材料であることを明らかにした。GeTe-CuTe擬二元合金の諸特性の組成依存性を調べた結果、GeTe、GCT両化合物から組成がずれると結晶化温度は上昇するが、結晶化時間も遅くなることがわかった。また、アモルファスと結晶の体積変化や反射率変化の組成依存性を調べた結果、GeTe-CuTe擬二元合金は結晶化に伴いGeTeとGCTに相分解することがわかった。GCTとGSTを積層させたメモリデバイスを作製した。異なる材料を組み合わせる場合、それぞれの材料特性の関係が最適化されている必要があるが、GCTとGSTはそれらの関係を満たすことが基礎実験から確認されていた。実際に作製したデバイスの電気特性を測定すると、どちらもアモルファスの高抵抗状態、GSTのみ結晶化した中間抵抗状態、どちらも結晶化した低抵抗状態の三段階の抵抗状態を持たせることができた。また、それぞれの状態間の変化も印可電流・電圧を調整することで制御できることが確認された。
1: 当初の計画以上に進展している
3年間の研究期間の中で、Ge-Te-Si及びGe-Te-Cu系新規三元相変化材料の開発を行った。その中でも特にGeCu_2Te_3(GCT)三元化合物を見出し、その優れた特性について様々な分析により明らかにしてきた。さらに、GCTとGSTを用いることで、新しい材料の組み合わせで多値記録デバイスの作製に成功した。よって、本研究では、当初の計画以上に進展していると判断した。
本研究課題の期間は終了したが、今後、さらに研究を推進させるためには100nmやそれ以下の微細なデバイスによる電気特性の測定が必要であると考えられる。特に、消費電力や繰り返し回数の観点から新材料のデバイス特性を評価していくことが望まれる。
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