研究課題
本研究では、思春期前後における筋腱複合体の形態的特性の変化と力学的特性の変化との関係を明らかにすることを目的としている。本年度は、成人男女を対象に、等尺性足関節底屈トルク発揮時の下腿三頭筋腱(アキレス腱)および足部縦アーチの形状変化について磁気共鳴撮像法を用いて計測した。アキレス腱内には形態的特性が異なる腱膜部分と外部腱部分が存在する。そこで、筋収縮に伴うアキレス腱の縦ひずみおよび横ひずみを、各部位で定量した。筋収縮時に、腱膜部分と外部腱部分はいずれも縦方向へ伸長したが、その程度は腱膜部分より外部腱部分で顕著であった。腱膜部分は、最大随意トルク発揮30%以下の強度では縦方向のみならず横方向へも伸長が示されたが、それ以上の強度では、縦方向および横方向いずれの方向でもさらに伸長することはなかった。これらの結果より、腱膜部分は低強度において縦横の両方向へひずみ、外部腱部分は縦方向へのひずみが顕著であることが示された。また、筋収縮時には、下腿三頭筋腱複合体全体が短縮した。これは、筋収縮時に下腿三頭筋腱複合体の停止部(足部後方)が近位へ変位したことによるものと考えられた。そこで、筋収縮時の足部縦アーチの変形を定量し、その変形が下腿三頭筋腱複合体長変化におよぼす影響について検証した。その結果、脛骨に対する前足部の角度は安静時も筋収縮時も同程度であったが、脛骨に対する後足部の角度は、安静時より筋収縮時に顕著に増大した。つまり、前足部と後足部のなす角として定義した足部縦アーチ角は、筋収縮に伴い増加することが示された。このことから、下腿三頭筋腱複合体の力学的振る舞いには、足部縦アーチの形態的および力学的特性が関与することが示唆された。次年度では、青少年を対象に同様の計測を実施し、思春期前後の変化について横断的に検討する予定である。
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Journal of Applied Physiology
巻: 110((印刷中、電子版公開中doi:10.1152/japplphysiol.00776.2010)) ページ: 1615-1621