研究概要 |
藍色細菌は生物時計を持つ唯一の原核生物である。藍色細菌生物時計分子装置は時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCで構成されており、それらのタンパク質が複合体形成を変化させることで時計を刻んでいると考えている。タンパク質の複合体がいつ形成され、どこで相互作用するかを検証することで、生物時計を原子レベルで解明できる。まず、KaiBにラジカルを持ったスピンラベルを導入し電子スピン共鳴(ESR)法でKaiAやKaiCとの相互作用を調べた。スピンラベルを導入するためにCys残基導入KaiB変異体を25種類作製した。作製したKaiB変異体を精製し、それぞれにスピンラベルを導入した。KaiAはC末端ドメインでKaiBと相互作用することがわかっている(Mutoh et al., 2010)。そこで準備したKaiB変異体のうち、18種類とKaiAのC末端ドメインタンパク質(KaiAc)と反応させたところ、3種類のKaiBへ似たいでESRスペクトルに大きな変化が認められた。次にリン酸化状態を固定した2種類の変異体KaiCを用いてKaiB-KaiC間相互作用を調べた。KaiCのリン酸化サイトをグルタミン酸残基に置換した疑似リン酸化変異体KaiC_<DD>と、アラニン残基に置換した疑似脱リン酸化変異体KaiC_<AA>を用いた。KaiBはKaiC_<DD>に対して高い親和性があることが知られているため、KaiBをKaiC_<DD>と反応させるとESRスペクトルに変化が生じることが期待される。調べた18種類のうち、8種類のKaiB変異体でKaiC_<DD>によるESRスペクトル変化が検出された。KaiC_<AA>との反応では、調べた11種類のうち3種類のKaiB変異体でのみスペクトル変化が検出された。これまでの研究で、KaiC_<AA>はKaiBと相互作用しないとされていたが、実は弱い相互作用をすることが判明した。
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