アフリカ南部の降水量は南インド洋および南大西洋の海面水温の経年変動現象「亜熱帯ダイポールモード」に影響を受ける。この現象は、各海盆の北東部と南西部に海面水温偏差の極を伴い、南半球夏季(12-2月)に最も成長する。 本研究では、海洋大循環モデルの結果を用いて、南大西洋の亜熱帯ダイポールモードの成長/減衰機構を調べた。その結果、正(負)の海面水温偏差の極は、日射の効果で成長していることが分かった。これは、混合層厚が平年に比べてより薄く(厚く)なった結果、日射による混合層の加熱が強め(弱め)られたことによる。また、混合層厚の偏差は、亜熱帯高気圧の南下と強化に伴う潜熱偏差によることが示唆された。 亜熱帯ダイポールモードが成熟した後、正(負)の海面水温偏差の極は、エントレインメントの効果で減衰し始め、その後、潜熱の効果で減衰することが分かった。エントレインメントの効果は、混合層の水温がより高く(低く)なった結果、混合層下部との水温差がより大きく(小さく)なり、エントレインメントによる混合層の冷却が強め(弱め)られたことによる。また、潜熱の効果は、混合層が平年に比べてより薄く(厚く)なった結果、潜熱による混合層の冷却が強め(弱め)されたことによる。 以上の結果は、海面水温偏差の成長/減衰に潜熱偏差が直接寄与するという先行研究の結果と異なる。先行研究では考慮されなかった混合層厚の変動が亜熱帯ダイポールモードの成長/減衰に重要な役割をすることが、本研究により初めて明らかにされた。
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