研究課題
本研究の目的は、惑星の最外大気層である外圏が太陽風の重イオンと電荷交換反応(Solar Wind Charge exchange;SWCX)を起こすことで放出されるX線を観測し、天体の希薄な大気組成や分布を、太陽活動による変動も含めて特定し、X線観測をプローブとした惑星科学を開拓することである。そのために私は、ASTRO-H衛星に搭載されるマイクロカロリメータ(Soft X-ray Spectrometer;SXS)による世界初の宇宙観測成功に向けたデバイス作りと試験を行っている。私は共同研究者とともに、SXSの冷却に使用する超流動ヘリウムの蒸発量を~30μg/sに抑えるために、最適なデバイスの選定を進めてきた。住友重機械工業やNASA GSFCにて性能試験を行い、Engineering Model(EM)のデザインを決定した。また超流動ヘリウムがフィルム状になり流出することを防ぐためのデバイスのEMをSiの微細加工技術を用いて製作した。これらの結果は、国内学会にて報告した。また、「すざく」衛星が火星外圏でのSWCX放射を観測したデータの解析を行った。その結果、火星からの有意な放射を検出することはできなかったが、酸素バンドでのX線フラックスに2σの上限をつけることができた。「すざく」の観測は火星外圏からのSWCX放射を太陽活動極小期に初めて観測したものであったので、太陽風の観測データと過去の火星X線観測の結果と比較することで、太陽活動による火星外圏の密度へ制限をつけられた。これらの結果は国際学会で報告し、投稿論文を執筆中である。
すべて 2011 2010
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ADVANCES IN SPACE RESEARCH
巻: 47 ページ: 411-418