研究課題/領域番号 |
10J05959
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石川 久美 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | X線 / ASTRO-H衛星 / 超流動ヘリウム / 惑星 / 火星 / 地球外圏 |
研究概要 |
本研究の目的は、惑星の最外大気層である外圏が太陽風の重イオンと電荷交換反応(Solar Wind Charge exchange;SWCX)を起こすことで放出されるX線を観測し、天体の希薄な大気組成や分布を、太陽活動による変動も含めて特定し、X線観測をプローブとした惑星科学を開拓することである。そのために私は、ASTRO-H衛星に搭載されるマイクロカロリメータ(SoftX-ray Spectrometer;SXS)による世界初の宇宙観測成功に向けたデバイス作りと試験を行っている。私は共同研究者とともに、SXSの冷却に使用する超流動ヘリウムの蒸発量を抑えるために、最適なデバイスの選定を進めてきた。また超流動ヘリウムがフィルム状になり流出することを防ぐためのデバイスのフライトモデルをSiの微細加工技術を用いて製作した。並行して製作したデバイスを熱サイクル試験にかけ、室温から窒素温度までの温度変化に耐えられることを確認した。また、「すざく」衛星が地球外圏でのSWCX放射を観測したデータの解析を行った。地球外圏からのSWCX放射は「すざく」の全データに含まれると期待されるが、それらを系統的に解析し、地球外圏大気や磁気圏内のプラズマ分布の観点から議論することは行われていなかった。そこで磁気嵐が起きている最中の全「すざく」データ5つをまとめ、「すざく」の視線方向によってSWCX放射効率が異なるという結果を初めて得た。これらの結果は国内学会で報告し、投稿論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的は惑星からのSWCX放射を系統的に知ることであり、そのためにデバイス開発と既存のデータ解析を行っている。デバイス開発は一部のデバイスに関してはフライトモデルまで製作を完了している。データ解析に関しては、火星と地球外圏でのSWCX放射について進めている。火星ではSWCX放射の観測から火星外圏モデルへの制限をつけられた、地球外圏でのSWCX放射の系統的な解析を開始しており、視線方向によるSWCX放射効率の違い、といった傾向が見えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
デバイス開発に関しては、エンジニアリングモデルを使用した性能試験を行い、要求性能を満たすことを確認する予定である。デバイスの機械的な強度を調べるための振動試験も行い、打ち上げ時の衝撃に耐えられることも確認する予定である。データ解析では、地球外圏からのSWCX放射を「すざく」のデータを用いて系統的に解析を進める。具体的には太陽風変動に伴うSWCX放射の変動を全「すざく」データから探し、視線方向とSWCX放射効率の関係を詳細に調べる。その際、太陽風が到達した際の地球磁気圏シミュレーションを用いてカスプ方向やシース方向といった磁気圏内を特徴付ける方向との関係性も調べる。
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