研究課題/領域番号 |
10J06017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江端 宏之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 濃厚懸濁液 / パターン形成 / 自己駆動粒子 |
研究概要 |
我々は垂直加振下のポテトスターチ懸濁液界面において、分裂する穴を発見した。自発的に分裂を繰り返すパターンは反応拡散系や化学反応系では発見されているが、複雑流体の系では初めての報告である。また、我々は安定な穴から分裂する穴への分岐現象も発見した。我々は穴の変形と運動のモデルを対称性の議論から導き、全く異なる系である反応拡散系における孤立パターンと同様の方程式で運動が記述できる可能性を示した。 垂直加振下の濃厚懸濁液に特徴的な界面の不安定性についての実験はいつくかあるが、理論的な研究はほとんどされていないのが現状である。そこで我々は、今まで注目されてこなかった、壁面でのレオロジーを考慮して流体の方程式から界面の方程式を導きだし、濃厚懸濁液の界面の不安定性のモデル化を行った。このモデルにより、先行研究で発見されていたheapingという界面不安定性の実験結果を非常に良く説明できることを示した。 以上の懸濁液では液体に分散している粒子は球状に近く、自発的に動くことのない粒子であった。私はさらに研究を進めるために、自発的に動く粒子、特に形状が変形をすることで動くことが出来る粒子に着目をした。そこで、まずは一粒子の運動について実験を行った。私は水よりも重く粘性の高いシリコンオイル上に水滴を乗せ垂直加振することで、液滴が変形をしながら自発的に運動することを発見した。これは加振により水滴と空気の気液界面のみ共振を起こし、水滴上に局在したファラデー波が起こる事で駆動されることが分かった。液滴の運動は液滴の形状の対称性に合わせて、直線運動・公転運動・自転運動・ジグザグ運動など様々なものが現れた。ファラデー波により液滴の形状が変形するという報告はあるが、ファラデー波により自発運動をする液滴は初めての報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今まで発見されていなかった界面の不安定性を発見することが出来、全く異なる系である反応拡散系との類似性を示す事が出来た。また、理論的な研究がほとんどなされていない濃厚懸濁液界面の不安定性について、流体の方程式からモデルを導出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
懸濁液界面の不安定性と懸濁液のレオロジーの関係性は未だ不透明であるため、レオメーターを使用した実験を行う。さらには、理論的な研究から懸濁液界面の不安定性に対して、壁面上でのレオロジーも重要であることが示唆されたため、加振下での粉体粒子の壁面上での振る舞いを測定する。
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