赤血球の産生量はエリスロポエチン(Epo)の分泌を介して調節されており、低酸素環境や貧血状態ではEpoの分泌量が亢進し、組織への酸素供給を維持する。成体における主なEpo産生臓器は腎臓であるが、そのEpo産生細胞(REP細胞)におけるEpo遺伝子の発現制御機構については解析が進んでいない。我々はEpo遺伝子周辺180-kbを含む大腸菌人工染色体(BAC)を用いたトランスジェニックマウスの解析により、この領域に腎臓エンハンサーが含まれることを同定している。本研究では、REP細胞特異的にCreを発現するトランスジェニックマウス(REP-Cre)を作成し、REP細胞特異的にHIFや他の転写因子をノックアウトさせた場合のEpo遺伝子発現に与える影響を調べる。これにより、REP細胞の持つ強力な低酸素応答能の分子機構を明らかにすることを目的とする。また、Epo遺伝子発現制御の異常が、腎性貧血発症にどのように関与するのかについても解析を進める。本年度においては、BACを用いてREP細胞特異的Cre発現マウス(REP-Cre)の樹立を試みた。まず、Epo遺伝子周辺180-kbの領域を含むBACクローンに対して大腸菌内相同組換えを行い、Epo遺伝子座にCreリコンビナーゼ遺伝子を導入した。組換えたBACDNAをシークエンス法などにより確認した後、超遠心法により精製したBACDNAを用いてマイクロインジェクションを行った。その結果、REP-Creトランスジェニックマウスを4匹得た。今後、系統樹立できたREP-CreマウスをROSA26Rマウスと交配し、Creの発現や組換えパターンを解析する予定である。このREP-Creマウスにより、細胞培養などが困難であるREP細胞について個体レベルでの詳細な解析が可能となる。
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