研究課題/領域番号 |
10J06108
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山嵜 瞬 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | エリスロポエチン / トランスジェニックマウス / 大腸菌人工染色体 / 腎臓 / Creリコンビナーゼ |
研究概要 |
エリスロポエチン(Epo)は赤血球の産生量を調節するホルモンとして分泌され、低酸素環境や貧血状態ではその分泌が亢進することで組織への酸素供給が維持される。成体における主なEpo産生臓器は腎臓であるが、腎内Epo産生細胞(REP細胞)についての解析は進んでいない。本研究では、Epo遺伝子周辺180-kbを含む大腸菌人工染色体(BAC)を用いて、Epo産生細胞特異的にCre組換え酵素を発現するトランスジェニックマウス(Epo-Cre)を作成し、REP細胞における低酸素応答能の分子機構および腎性貧血発症との関連を明らかにすることを目的とする。昨年度に、BACトランスジェニックマウスの手法によりEpo-Creマウスを3系統樹立した。本年度においては、Creによる組換えが起きた細胞で赤色蛍光タンパク質を発現するマウス(ROSA26-tdTomato)を米国ジャクソン研究所から入手し、Epo-Creマウスと交配し、Creが発現する細胞・組織を解析した。その結果、Epoの産生部位である腎臓と肝臓において組換えによるtdTomato蛍光を認めたが、一方でその他の臓器における組換えも検出された。腎臓における組換えについて詳細な解析を行い、REP細胞マーカーであるCD73を発現する尿細管間質細胞で組換えが起きること、また貧血誘導的により組換え細胞が増加することを2系統において明らかにした。これらの結果から、Epo-Creマウスを用いることでREP細胞特異的なノックアウトなどの遺伝子操作が可能となることを示した。さらに、Epo-Creマウスを利用することで、通常(非貧血)状態におけるREP細胞の解析や、REP細胞の追跡実験が初めて可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回作成したEpo産生細胞特異的Cre発現トランスジェニックマウス(Epo-Cre)は、期待通りにREP細胞において組換えを起こすことが明らかとなり、今後の多くの研究に有用であることが期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、低酸素応答関連因子であるHIF-2αやPHDsの条件付きノックアウトマウスとEpo-Creマウスを交配し、Epo遺伝子発現やREP細胞自身の形質に与える影響を解析する予定である。さらに、Epo-Creマウスを用いたREP細胞の追跡実験を行い、慢性腎臓病における線維化とREP細胞の関係についての解析も進めていきたい。
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