平成22年度、研究題名「環状チオエステルを用いた大環状ポリマーの精密合成による機能性高分子材料の開発」による研究実績の概要を以下の通りに記述する。 1、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)に不可欠な連鎖移動剤である環状チオエステルの合成、精製を行い、また、環状チオエステルの構造、環の大きさなどの最適性を検討した。その結果、RAFT重合に適応できる環状チオエステルを合成できた。 2、連鎖移動剤に最適化した環状チオエステル、開始剤にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)からなる開始系を用い、ビニル系モノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)及びN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)の重合を行ったうえで、^1H NMR、MALDI-TOF MSおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定などにより重合のリビング性、精密性について検討を行った。その結果、大環状ポリマーの精密合成法を確立した。 3、以上のことにより、環状チオエステルを連鎖移動剤に用いた大環状ポリマーの高機能化について検討した。具体的に、アジド基を持つビニルモノマーを用いることにより、多官能性大環状ポリマーの精密合成をできた。この後、糖の機能性部位を有するアセチレン化合物を合成し、これらを用いた大環状ポリマーの化学修飾を行った。得られたポリマーの性能を評価したうえ、特異な認識や検出システムを有する大環状ポリマーの開発を達成した。
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