研究概要 |
今年度はこれまでに報告した研究内容のさらなる拡張を目的として、同様なビニル化合物の重合により環状以外の形状を有する星形ポリマーの合成を行い、形状の違いによる材料物性への影響を評価した。具体的には、有機塩基触媒を用いたグループトランスファー重合(GTP)によるポリメタクリル酸エステルの精密合成を行った。さらに詳細な内容を以下に記述した6'= (1)GTPの開始点を3、4、および6個有する開始剤(シリルケテンアセタール)を新規に合成した。続いて、それぞれのシリルケテンアセタールを開始剤、強力なルイス酸性を示すN-(トリメチルシリル)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Me_3SiNTf_2)を有機触媒に用いたメタクリル酸メチル(MMA)の重合をジクロロメタン中、-55℃の条件下で行った。その結果、ポリマー鎖中の三連子がシンジオタクチック(rr=88%)に偏った星型PMMAの精密合成を達成した。また、得られたポリマーの構造は^1H NMR,MALDI-TOF MSおよびサイズ排除クロマトグラフィー測定等により解析した。 (2)得られた立体規則的な星型PMMAの熱物性を測定した。その結果、PMMAの立体規則性が同程度の場合、枝数の増加に伴いガラス転移温度(T_g)は低下することが確認された。一方で星型PMMAの枝数が同一の場合、ポリマー全体のrr値が減少するほどT_gが低下することを明らかにした。 以上の結果から、有機酸触媒を用いたMMAのGTPにより高立体規則性を有する星型PMMAの合成を達成した。また、得られた星型PMMAの熱挙動と立体規則性との関係も明らかにした。以上の研究成果はすでに国内外の学会や誌上で発表した。
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