研究課題
カイコ濃核病ウイルス1型および2型のウイルス感染機構について調査した。ウイルス1型においては、ウイルス接種後のカイコの病徴を経時的に調査した。その結果、カイコは、ウイルス接種後致死するまでに約10日の時間を要すること、さらに致死の直前までは、成長に顕著な差は見られないことがわかった。また、これらの個体において中腸がどのような影響を受けているのかを調べるために、切片を作成し、組織染色により観察を行った。その結果、感染末期に近づくにつれて、核が肥大化した円筒細胞の数が増えていく様子が観察された。同様に、ウイルスの増幅を、リアルタイムPCRを用いて、ウイルス由来の転写産物量を測定することにより調べた。その結果、ウイルスは接種後6日目から急激に増え始め、致死するまで増加していることがわかった。この推移は、中腸切片の観察で明らかになった、核が肥大化した細胞数が増加する時期と同調していた。一方、ウイルス2型においては、ウイルスのレセプターとして機能していると考えられるウイルス抵抗性/感受性遺伝子nsd-2(+^<nsd-2>)の中腸での発現場所とウイルスの感染場所との関係性を調査することで、1ウイルス2型の感染機構の解明に取り組んだ。ウイルス2型の標的組織である中腸を前部、中部、後部に分け、それぞれの領域における抵抗性/感受性遺伝子の発現の有無を調査したところ、本遺伝子は中腸後部で強く発現しており、前部ではわずかに、そして、中部では発現していないことが明らかになった。そこで、ウイルス2型が中腸後部のみで感染しているのかどうかを調査したところ、予想に反して、中腸のすべての領域でウイルスの転写産物が検出された。この結果は、ウイルス2型感染においてレセプターを介さないcell-to-cell感染が起こっている可能性を示唆するもので、濃核病ウイルスの新たなウイルス感染機構の発見に繋がったと言える。
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