研究課題/領域番号 |
10J06167
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 保彦 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アミノ酸 / 窒素循環 / 海底下生命圏 / 微生物 / 窒素同位体 / 海洋堆積物 |
研究概要 |
1.堆積物中のアミノ酸濃度は生体試料に比べてごく低いため、アミノ酸d15N分析法の改良に取り組んだ。ガスクロマトグラフィー同位体比質量分析計(GC-C-IRMS)のGCカラム選択を最適化することで、従来手法よりも数倍以上高感度化した手法を開発できた。 2.新たに導入したガスクロマトグラフィー窒素リン検出器(GC-NPD)の立ち上げを行い、GC-NPDによるアミノ酸の定量分析法を確立した。 3.海洋堆積物中のアミノ酸窒素同位体組成(d15N)を世界で初めて分析し、その分布・変動を、前年度までに行った微生物培養実験の結果に基づいて解釈することで、海洋堆積物中のアミノ酸の動態を解明し、海底下生命圏の代謝・生態に新知見を与えた。海洋堆積物試料は、地球深部探査船「ちきゅう」慣熟訓練航海(房総半島沖)に申請者自ら乗船して採取して得た試料を使用したほか、共同研究者から様々な海域(日本海など)の堆積物試料を入手した。また、環境中の微生物代謝を推定するための戦略として、「同一試料から異なる画分のアミノ酸を抽出し、d15Nを分析・比較する」という手法を世界で初めて考案・実行した。具体的には、堆積物固相に含まれるアミノ酸、堆積物粒子間の流体(間隙水)に含まれる溶存態アミノ酸、および他の含窒素有機化合物(特に光合成色素であるクロロフィル)を分けて抽出し、それぞれのd15Nを分析・比較した。それらの結果から、海洋堆積物中のアミノ酸の動態における微生物の働きを推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋堆積物のアミノ酸窒素同位体組成の測定に成功し、海洋堆積物中の有機物動態・微生物代謝に制約を与えることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに様々な海域の堆積物のアミノ酸窒素同位体組成を測定し、海洋環境や堆積環境の違いが、有機物動態・微生物代謝に与える影響を捉え、グローバルな議論を行う。
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