近年、2次元フォトニック結晶において、光の波長程度の微小領域に光を閉じ込める光ナノ共振器が実現されており、極低消費エネルギー光スイッチなどの様々な光デバイスへの応用が期待されている。このような光ナノ共振器を複数個用いて、いわゆる強結合共振器状態(外部環境への散逸より十分高速に複数の共振器間を光が遷移できる状態)を形成し制御できれば、光バッファメモリや光量子バスなどの高度な光機能の実現が期待できる。しかし、ナノ共振器がもつ強い光閉じ込め効果により、光の波長程度より大きく離れると共振器間の結合の強さは一般に極めて弱くなってしまうため、強結合状態を形成可能な共振器の配置には強い制約が課されてきた。本研究では、この制約を大幅に緩和し、柔軟な光ナノ共振器強結合系の形成とその制御を実現することを目的としている。本研究では既に、適切な条件下で導波路を介することで、ナノ共振器部への強い光集中を維持しつつ離れた共振器間の強結合状態を形成できることを理論的・数値的解析により見出している。本年度はこの結合光ナノ共振器の作製・評価とその動的制御の実験を行った。まず、理論解析により得られた設計条件に従い、共振波長1.54mmを有する2つのマルチステップヘテロ型光ナノ共振器を83μm離して配置し、中間部に導波路を配置した試料を作製した。この試料に中心波長1.54μm、時間幅4psの光パルスを入射し、各共振器からの放射光振幅の時間分解測定行ったところ、共振器間を54psの周期で光が交互に遷移する光ラビ振動が観測された。これは作製した試料が結合共振器として動作することを示している。さらに光ラビ振動が生じている状態下で、一方の共振器に中心波長770nm、エネルギー1.2pJの制御光パルスを照射して屈折率変化を与えると、光ラビ振動を動的に停止させることに成功した。このような結合共振器の動的制御により、複数共振器間での自在な光制御が可能となった。
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