研究課題/領域番号 |
10J06373
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芳賀 早苗 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 生体イメージング / 小胞体ストレス / 脂肪肝 / アポトーシス / 酸化的ストレス / 細胞内シグナル / 肝再生 / 肝傷害 |
研究概要 |
1.小胞体ストレスマーカープローブ 小胞体ストレス応答は、アポトーシス誘導および細胞障害への防御機能を果たす。これらストレス応答プローブ開発は、肝をはじめとした臓器の病態を理解のために有用であると考えられる。 (1)2分割したルシフェラーゼを基に、PERKがオリゴマーを形成した際に発光するPERKプローブを作製した。これを細胞へ一過性導入しその機能性確認を試みたが、刺激にたいする反応が起こらなかった。そこで、さらに小胞体留置シグナルを付加した改良型を作製したところ、プローブの反応を捉えることに成功した。しかしながら現在のところ、プローブの安定した再現性が得られていない。 (2)CHOPレポータープローブを肝細胞株に導入し、種々の環境に曝した際のCHOP転写活性の検討を行った。実験の結果、高血糖状態および低酸素/再酸素化刺激によってプローブのシグナルを優位に上昇させた。これらの結果より、種々の肝病態に小胞体ストレスが大きく関与していることが示唆された。 2.脂肪肝再生不全の機序解析 脂肪肝は肝切除後、酸化的ストレスとCaspase-3活性の上昇による肝細胞傷害が原因で肝再生不全を引き起こす。これらを制御する候補分子Fasについて、脂肪化肝細胞をもちいて詳細に検討した。脂肪化肝細胞は確かにFas発現を増強させており、そのリガンドにたいする感受性(ROS産生能および細胞死)も増強していた。またFasを介した細胞死には、caspase依存性のアポトーシスによるものと酸化的ストレスを介したネクローシスによるものの二つの経路が存在することが示された。さらに、Fasリガンド自身も脂肪肝で恒常的に高い発現を示しており、これが同じく高発現のFasを経由して高い細胞障害性を起こすことが示唆された。病態肝の外科的ストレスに対する反応性解析は、病態の理解、診断、治療分野へつながる重要な研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレスマーカープローブに関しては、肝細胞のストレス状態を、作製したプローブをもちいて、細胞レベルで観察することまで到達し、他方のプローブは現在作製(開発)段階にあり、現在構造の改良を進めている。改良には構造の再構成などに時間を有し、完全な機能確認まで進んでいないが、おおむね計画通りに研究が進行した。脂肪肝再生不全の機序解析については、原因分子についてその重要性の確認を進めた。この結果、新たな関与分子を突き止め、細胞障害性機序の解明にさらに近づくことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現在作製中のプローブについては改良型を作製、テストし、安定した再現性のある機能を持つものの完成を目指す。これには、2つのプローブの発現量の差を軽減するためのシステムを利用する計画である。その他肝におけるストレス関連分子について、分子機能イメージングプローブの作製に向けた検討に取り掛かる。 脂肪肝再生不全の機序解析について、Fas/Fasリガンド誘導経路および酸化的ストレス産生を総合的に制御する分子機序解明に焦点を当て、分子のノックダウン、ストレス状態のイメージング、分子生物額的手法等をもちいて、細胞レベル、動物レベルでの解析を進める。
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