1、脂肪肝再生不全の機序解析 脂肪肝は肝切除後、酸化的ストレスとCaspase-3活性の上昇による肝細胞傷害が原因で肝再生不全を引き起こす。この時、脂肪化肝細胞では(1)発現誘導されたFas/Fasリガンドを経由したアポトーシスの増加、そして(2)AREを介した抗酸化機能抑制による酸化的ストレスの増加が引き起こされていた。これら脂肪化によるストレス反応は、脂肪肝細胞におけるp62/SQSTM1の発現低下によって誘導されていることが明らかとなった。つまりp62/SQSTM1は、脂肪肝における易傷害性誘導の中心分子であることがわかった。 本研究は、肝におけるストレス反応を制御する分子を見出す意義深い研究であっただけでなく、ストレス反応を生体において非侵襲的に捉える技術の開発にもつながる重要な研究となった。 2、ストレスマーカープローブの開発・作製 Aktは肝細胞の生存や成長に深くかかわっていることが知られている。そこで、ストレスマーカーの一つとして、Aktの活性化をモニタリングするプローブの開発を試みた。 プローブは二分割したルシフェラーゼを基に設計し、Aktのリン酸化反応によって発光するシステムである。まず、プローブを導入して、インスリンまたはHGF刺激によりプローブの機能を検討したが、反応性が低いことが問題となった。そこで、(1)Akt基質部位とFHAをつなぐリンカーの長さを検討、(2)プローブにミリストイル化させ、細胞膜近傍にプローブを配置する、などの改良を施した。再度検討した結果、プローブは、短いリンカーでミリストイル化したものが現在のところ最も細胞刺激に対する反応性が高いことがわかったが、さらなる構造および測定方法の改良が必要な段階である。 本研究は、肝をはじめとした正常細胞の細胞活性・生存能、癌化過程のモニタリング、抗がん剤の評価等にも広く活用できると期待される。
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