研究課題
マウス12番(ヒト14番)染色体に存在するDlk1-Dio3インプリンティングドメインは正常な発生に不可欠な領域であり、ガンと密接に関与する可能性が示唆されている。Dlk1-Dio3ドメインには多数の非コード遺伝子群(Gtl2,miRNAsおよびsnoRNAsを含む)が存在するが、機能や発現制御については不明な点が多い。Gtl2母方欠損マウスの解析から、非コード遺伝子群の発現低下は生後致死を引き起すことが確認された。そこで本研究では非コード遺伝子群の更なる機能解析を目的とし、Gtl2母方欠損胚を用いた腫瘍形成実験と人工細菌染色体(BAC)を用いた非コード遺伝子群過剰発現マウスの作製および解析を試みた。Gtl2母方欠損胚に由来する腫瘍はコントロールに比べて大きく、個体間でばらつく傾向にあり、腸管様の構造が多く認められた。またmiRNAアレイ解析によって、Dlk1-Dio3ドメイン内の28種類のmiRNAの発現低下が認められた。Dlk1-Dio3ドメイン外では、幹細胞特異的な6種類のmiRNAとガン抑制に関わるmiR-18aが発現低下し、分化マーカーである3種類のmiRNAとガン促進に関わるmiR-378が発現上昇を示した。さらに増殖能への関与を調べるため、Gtl2母方欠損胚から繊維芽細胞を樹立し、3T3プロトコールに従い50代まで継代を行った。Gtl2母方欠損由来の繊維芽細胞は野生型の繊維芽細胞に比べて、増殖率が高い傾向にあった。よって、Gtl2を含めた非コード遺伝子群の発現低下は、細胞増殖を促進し分化能に影響を与える可能性が示唆された。一方、非コード遺伝子群過剰発現マウスは2種類のBACを用いて作製され、現在解析を進めている。2種類の過剰発現マウスは異なる表現型を示しており、Dlk1-Dio3ドメインの非コード遺伝子群の過剰発現は発生に影響を与えることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍形成に関する実験はほぼ終了し、現在論文を作製している。過剰発現マウスは2種類作製し、ラインの選別および表現型解析を進めている。
今後も過剰発現マウスの解析を継続して行う予定である。しかし、今年5月からケンブリッジ大学へ移るため、共同研究として研究を遂行する予定である。
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Plos Genetics
巻: 8 ページ: e1002440