研究課題
円偏光によって誘起される有効磁場(逆ファラデー効果)が提唱されています。この磁場は光の磁場とは違い、光の電場と電子の相互作用による有効的な磁場のことをいい、物質を磁化させることができるだけでなく、磁化の方向も制御できます。しかし、この磁場の大きさはスピン軌道相互作用の強さに依存し、その相互作用の大きさが弱い物質では有効磁場は小さくなり、その結果、磁化を制御できなくなります。また問題なのは、スピン軌道相互作用が強い物質の多くは、貴金属であるため、入手が容易ではありません。そのため、スピン軌道相互作用に依存しない新しいメカニズムが今後求められていると私たちは考えました。もし、スピン軌道相互作用に依存しない新しいメカニズムを見いだすことができたら、貴金属材料に頼らずに、有効磁場を用いた磁化制御が可能になります。私たちはスピン軌道相互作用の代わりとなるものを探した結果、その候補はスピンBerry位相というものです。スピンBerry位相とは、異なる3つの局在スピンのベクトルがつくる立体角のことをいいます。この位相は、スピン軌道相互作用とは異なるものですが、スピン軌道相互作用と似た性質を持ち、電子と相互作用する、ということが異常ホール効果の研究から示されています。私たちはこの研究結果から類推し、"スピン軌道相互作用に依存しない逆ファラデー効果は、スピンBerry位相から創られる"という仮説を立てました。仮説を検証するために、本研究では、伝導電子のスピンと局在スピンが相互作用するモデル(s-dモデル)を使いました。この局在スピンがBerry位相の素となっています。この局在スピンからの影響を取り入れて計算を行った結果、伝導電子スピンに有効磁場(逆ファラデー効果)が作用することを示し、スピン軌道相互作用に依存しない逆ファラデー効果が存在することが分かりました。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画では、光とBerry位相による新しい理論を示すことでした。私たちは、円偏光とBerry位相による新奇な現象-有効磁場のメカニズム-を示すことに成功しました。さらにその磁場のメカニズムを、磁気渦の磁化反転に活用し、磁化反転の高速化に役立つことが期待される円偏光を使った新しい磁化反転法を提案できたため。
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