近年、子どもから大人まで幅広い年齢層で社会不適応やひきこもりを示す人々が増えてきており、社会的関心が集まっている。社会不適応やひきこもりが社会に広く認知されるようになるにつれて、社会性やコミュニケーションを苦手とする広汎性発達障害を持つ人々の多くが社会不適応やひきこもりを呈している実態が明らかになってきた。広汎性発達障害の有無に関わらず、社会不適応やひきこもりを呈する人々の多くは共通して、睡眠時間帯が午前中にまで大幅にずれ込んだ超夜型生活や昼夜逆転生活が定着している。このような不規則な睡眠習慣は生体リズムを乱し、生理機能、気分・感情の制御、認知機能を悪化させ、社会不適応やひきこもりを深刻化させている可能性が考えられる。そこで、就寝・起床時刻が一定していない男子大学生を対象に、24時間以上、実験室に滞在してもらいながら、一晩の断眠実験を実施し、断眠が気分・感情に及ぼす影響について検討した。気分・感情評価にはProfile of Mood States (POMS)とState-Trait Anxiety Inventory-FOrm JYZ (STAI-JYZ)を使用した。断眠前後の気分・感情状態を比較したところ、断眠後では「緊張」、「抑うつ」、「怒り」、「活気」は有意に低下し、「疲労」は上昇する傾向が認められた。さらに、普段の就寝時刻と起床時刻の不規則度との関係を検討したところ、就寝時刻の不規則さと「活気」状態には有意な正の相関が認められ、不規則な生活をしているほど断眠の影響を受けにくいことが明らかになった。
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