研究概要 |
本研究では,発光体としてInAs/GaAs自己形成量子ドット,光共振器としてGaAs2次元フォトニック結晶ナノ共振器を用いた半導体中での発光体・光共振器間相互作用の発現,観測及び制御を目指している.昨年(平成22年度)我々は,量子ドットとナノ共振器の相互作用の強さを決める,量子ドット・ナノ共振器間の空間的な位置関係と,量子ドットの発光波長とナノ共振器の共振波長の差を制御するために,量子ドットのフォトルミネッセンス発光の光学イメージングおよび分光測定による量子ドット・ナノ共振器間の位置・波長合わせ手法を開発・実証した.今年度は,本手法の位置検出アルゴリズム改良などによる位置検出精度の向上と,統計的な評価を目的とした測定システムの自動化を行う一方で,本手法を用いて量子ドット・ナノ共振器結合系を作製する上で重要となるもう一つの要素である,MBE法を用いた極低密度量子ドットの成長条件探索を行った.ここで極低密度とは,一般的な2次元フォトニック結晶ナノ共振器の光閉じ込め効果が現れるために必要なフォトニック結晶領域の大きさである10μm角に量子ドットが1個程度となる,10^6個/cm^2以下の密度を指す.この程度の密度であれば,デバイス応用において重要なフォトニック結晶導波路との融合に際して損失の原因となる,導波路内に存在する意図しない量子ドットを排除することができる.量子ドットの原料となるインジウムの供給量を減少させるという比較的素直なアプローチによって,安定して目標値以下に密度を下げることはできたが,フォトルミネッセンス発光像で暗く見える場所からも発光スペクトルが得られる,フォトニック結晶スラブ表面に多数の微小な穴が生じる,などの問題に遭遇した. 様々な成長条件を検討したところ,量子ドットそのものの成長条件に加えて,量子ドットをスラブ内部に埋め込むためのキャップ層の成長条件が大きな影響を及ぼすことを見出した.
|
今後の研究の推進方策 |
量子ドットのみならずキャップ層も含めた条件探索をさらに進め,量子ドット・ナノ共振器結合系の作製により適した量子ドットを作製していく.さらに,得られた良質の量子ドットを用いて,デバイス応用を視野に入れた,導波路等を組み合わせた複雑な構造へと展開していく.この際,改良された位置・波長合わせ手法を用いて,量子ドット・ナノ共振器間相互作用の統計的な評価を行っていく.
|