研究概要 |
本年度の研究は,VMのライブマイグレーション(VMストレージマイグレーション)を高速化するという研究に取り組んだ.そもそも本研究の目的は,誰でも容易に使用できる仮想計算機貸出システムと,仮想計算機(VM:Virtual Machine)の柔軟な運用システムの開発を通して,一般の計算機利用者に対する仮想化技術の適応が利用者に対してどのような利便性をもたらすかを検証することにある.そのため,本年度(平成24年度)の研究目標は,仮想計算機貸出システムと異種OS間のライブマイグレーションを主眼にして研究を進めていく予定であった.具体的にはAndroid OSとLinux間のライブマイグレーションを目指した.このシステムは誰でも容易にVMを持ち運ぶことができ,有益である.この目標を達成するため,VMストレージマイグレーションの高速化という課題に取り組んだ.VMストレージマイグレーションはVMを駆動状態のまま他の物理デバイスに転送することができる技術である.しかし,VMのディスクサイズは一般に巨大であるため,転送に大きな時間がかかる.具体的には今日普及するGigabitのLAN環境であっても,20GBのディスクイメージを含むVMをVMストレージマイグレーションで他の物理デバイスに転送するのには10分近くの時間を消費する.そのため,これは問題である.そこで,われわれは,個人用途によるVMライブマイグレーションには特定の物理マシンを往来するという性質があるという点に着目し.書き換わったディスクページのみを転送することで,高速化を図るという研究を行った.本研究の結果.最大で約90%もの転送時間を削減することが可能となり,十分に意義のあるものとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,AndroidOSとLinux間のライブマイグレーションを行うためには,VMのディスクイメージを如何に転送するかが問題であった.従来のVMライブマイグレーションではVMのディスクイメージの転送までは考慮されておらず,ディスクイメージの転送を解決しなければ,容易にVMを持ち運ぶシステムを構築するのは不可能であった.しかし,今年度(平成23)にVMのディスクイメージごとライブマイグレーションを行うという新技術が提案され,われわれはそれに続く高速化の研究として,研究を行った.ちょうど研究の最先端の潮流に乗ることができたため,論文もいくつか提出でき,おおむね順調に進展できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究にて,高速なVMストレージマイグレーションを達成することができた.しかし,あくまでプロトタイプとして,差分転送というアイデアが十分に機能することを確認するためのものであったため,システムとして完全であるとは言えない.そのため,今後の方針としては,システムを人に使ってもらえるためのソフトウェアとして昇華するための作業と,Linuxコミュニティへのパッチ投稿を目指す.
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