研究概要 |
本年度は、仏教論理学派の展開期を代表する中観派の思想家、シャーンタラクシタ(8C)著『摂真実論』・カマラシーラ(同)著『摂真実論注釈』のうち、唯識説の説かれる第23章「外界対象の検討」章のサンスクリット語校訂テクストと訳注を整備した。さらに、その基礎研究に基づく思想研究の成果の公表、及び実地調査を以下のとおり実施した。[括弧内は下記11及び12の項目に対応] 1.同章第66-67偈に提示される有相唯識論の第一論証、「必ず同時に認識されること」 (sahopalambhaniyama)を証明する論証を取り上げ、解釈上の問題点を挙げて考察した。[雑誌:「シャーンタラクシタのsahopalambhaniyama論証再考…」,"Santaraksita's Interpretation...",学会:「『タットヴァ・サングラバ・パンジカー』「外界対象の検討」章におけるカマラシーラによる…」] 2.同章第69偈に提示される有相唯識論の第二論証である自己認識論証を取り上げ、解釈上の問題点を挙げて考察した。[学会:「『タットヴァ・サングラバ』における有形象知識論…」] 3.同章第83-86偈を検討して、シャーンタラクシタの仏智観が中観派の立場に立つとする従来の説を批判し、ブッダの自己認識を説く唯識説に立脚したものであることを明らかにした。[学会:「『タットヴァ・サングラバ』「外界対象の検討」章におけるシャーンタラクシタとシュバグプタの…」] なおまた、報告者は上記の文献研究に加え、平成19年から22年にかけて実施した西インド留学の成果として、ジャイナ教遊行僧に関するフィールドワーク、及びジャイナ教と仏教双方の世界的権威として知られる故ジャイナ牟尼の著作リストを公表した。[雑誌:"ATentative ...",学会:「インド西部…」]
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