ガンビエル酸類は食中毒シガテラの原因渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusから単離された巨大ポリエーテル天然物であり、非常に強力な抗真菌活性を有することが明らかにされている。しかし、天然からの試料入手が困難な微量成分であるため、その作用機構やその他の生物活性については未だに未解明である。また、複雑で巨大な分子構造のため、未だその全合成は達成されていない。本研究では、ガンビエル酸Aの効率的全合成を目指し、本年度は、そのA/BCD環部フラグメントの合成の検討を行った。まず、C1-C6フラグメントとB環部フラグメントとの鈴木-宮浦カップリング反応とヨードエーテル化によるA環の立体選択的構築を鍵反応とし、A/B環部フラグメントを合成した。これと別途合成したD環部フラグメントに相当する鎖状のエノールポスフェートとを鈴木-宮浦カップリング反応により連結したのち、閉環メタセシス反応により、望みのエノールエーテルを得た。さらにC環の閉環とメチル基の導入を経て目的のA/BCD環部フラグメントを合成した。すなわち、2回の鈴木-宮浦カップリング反応を行うことにより効率的にフラグメントの合成を達成した。これにより、全合成に必要な量を供給できるA/BCD環部フラグメントの合成ルートを確立し、実際に数百ミリグラムのフラグメントを合成することができた。
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