本年度はDibenzo-18-crown-6(DB18C6)が水、アンモニア、メタノール、アセチレン分子を包接するメカニズムを解明するために、超音速ジェットレーザー分光法を用いてDB18C6単体および水、アンモニア、メタノール、アセチレン分子との1:1錯体の電子および赤外スペクトル観測することでこれらの構造に関する研究を実施した。 結果として、水またはアンモニア分子の場合に限ってDB18C6のコンフォメーションが大きく変化し水またはアンモニア分子を包接するという分子認識を示すことを見出した。具体的には、ゲストが水やアンモニア分子の場合、DB18C6はそれを認識し効率よく包接しようと大きく構造変化させるが、ゲストがメタノールまたはアセチレンの場合は単純に単体の構造(DB18C6自身が折りたたまった構造)に付着しただけの構造をとる。また、水またはアンモニア分子は2つのOH基またはNH基を介したbidentate型の水素結合をDB18C6と形成していることがわかり、ゲスト分子がbidentateで水素結合できるかどうかがDB18C6に構造変化一包接を引き起させるゲスト分子の条件であると帰結した。 これらの結果はクラウンエーテルの包接のメカニズムにおける基礎的な知見であり、今後の包接錯体の設計における基礎情報と成り得るので非常に意義深く重要である。
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