研究概要 |
本年度はp進表現論の高次元化へ向け、非完全な剰余体を持つ完備離散付値体のp進Hodge理論について研究した。具体的な問題として、以下で説明するp進monodromy定理の類似についての考察を行った。 J.-M.Fontaineにより定義されたHodge-Tate、de Rham、semi-stable、cristalline表現などのp進表現の分類は、G.Faltings、O.Hyodo、O.Brinonらにより高次元の基礎環(剰余体が非完全な完備付値体を含む)上までに拡張されてきた。p進monodromy予想とは、de Rham表現は有限次拡大をすればsemi-stableになるだろう、という予想であった。この予想は剰余体が完全な場合にはL.Bergerによって肯定的に解決された。また剰余体が非完全な場合(正確には剰余体のp-basisが有限の仮定の下で)には最近の森田知真の研究によって解決されており、高次元の環に対しても最近の辻雄の研究がある。 上記のp進表現の分類よりも強い"horizontal"な分類がO.Brinonによりなされている(例えばde Rhamに対しhorizontal de Rhamという、より強い条件がある)。これらに対してもp進monodromy定理の類似:horizontal de Rham表現は有限次拡大をすればhorizontal semi-stableになるか?という問題が考えられる。本年度の研究の結果,これは正しいことが証明できた(正確にはもっと精密化したものを示した)。証明の重要な部分では、P.Colmezによるp進monodromy定理の別証明で用いられたDieudonne-Manin分類を応用した。また、この定理の応用として次の2つのことを示した。1つ目はhorizontal de Rham表現の特徴付け(正確にはhorizontal de Rham表現の圏とcanonical subfieldと呼ばれる体上のde Rham表現の圏が圏同値であること)。2つ目は0.HyodoによるTate twistに対するGalois cohomologyのH1の計算の、horizontal de Rham表現への一般化。論文は準備中である。なお、森田によって証明されたp進monodromy定理と上記のhorizontalな類似の関係についてはわからなかった。
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