研究課題
トリプトファン代謝酵素であるインドールアミン酸素添加酵素(IDO)及びその代謝産物は、炎症時において、免疫動態に深く関与する因子として注目を集めている。今回は、Hepatitis B virus (HBV)トランスジェニックマウスにHBV特異的細胞障害性T細胞(CTL)を移入して誘導する急性肝炎マウスモデル(Ando K et al. J. Exp. Med 1993 ; 1541-1554)においてIDOの詳細な役割を解明し、診断治療へ応用することを目的とし研究を行った。本研究においては、HBVトランスジェニック/IDO^<+/+>マウス及びHBVトランスジェニック/IDO^<-/->マウスを作成し、HBV特異的CTLを尾静脈より移入することにより急性肝炎を発症させ、肝障害の変化をALT値、組織像、炎症性サイトカインの産生などにて評価した。そして、IDO阻害剤もしくはトリプトファン代謝産物を投与した状態での肝障害の変化を検討した。実験結果として、IDO^<-/->マウスにおいて有意な肝障害の軽減がALT値および組織標本より確認された。各種炎症性サイトカインの発現においてもIDO^<-/->マウスにおいて有意な減少が確認された。また、IDOの阻害剤を用いた検討においても、阻害剤の投与により肝障害の軽減が確認された。一方でIDOの代謝産物であるキヌレニンの投与は肝障害の増悪を招いた。HBV特異的CTLを投与し急性肝炎を発症するモデルでは、IDOの欠如は炎症の軽減を誘導した。これは、CTLによる直接的細胞障害が引き金になって起こされる炎症においては、IDOの存在が炎症の増悪を招く因子であることが考えられた。また、炎症と同時に産生が増加したキヌレニンは、肝細胞に対して障害的に作用していることが推測された。
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Journal of Immunology
巻: 185 ページ: 3305-3312
巻: 185 ページ: 4554-4560