研究概要 |
平成23年度は、昨年度に引き続きHepatitis B virusトランスジェニック(HBVTg)/indoleamine2,3-dioxygenase(IDO)-wild-typeマウス及びHBVTg/IDO-knockoutマウスにおいてHBV特異的細胞障害性T細胞(CTL)を移入することにより発症する劇症肝炎の評価を行った。本モデルでは、IDOの欠損による炎症の軽減を組織像及びalanine aminotransferase (ALT)値にて確認した。そして、炎症性サイトカイン及びケモカインの産生においてもIDOの欠損による減少が認められた。さらに、トリプトファン代謝産物であるキヌレニン投与はCTL誘導性肝障害を増悪させたことから、キヌレニン以下のトリプトファン代謝産物は肝細胞に対して障害的に作用していることが考えられた。これまでにHBV特異的CTLはHBV感染細胞を認識すると即時にIFN-_Yを放出し、また、HBVTgマウスの肝細胞はIFN-_Yによる障害を受けやすいことが証明されている(Ito H et al. J Immunol, 182: 391-397,2009)。よって、HBV特異的CTL誘導性肝障害はIFN-_Yとキヌレニン以下のトリプトファン代謝産物が肝炎の重症化に重要な因子であることが考えられた。また、IDO阻害剤である1-methyltryptophan(1-MT)の投与は肝障害を軽減したことから、HBV感染による劇症肝炎の治療に1-MTが有効である可能性が示された。
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