本研究では、赤外光レーザー(1064nm)集光下で金表面に生成する単一マイクロナノバブル(直径~1μm)を研究対象とし、その周りで起る現象と化学反応に基づいたマイクロナノバブルの新機能、性質の発現、新規利用法の確立を目的としている。本年度は昨年度に引き続き、量子ドット分散溶液中で金表面に気泡を発生させると、量子ドットが金表面上にリング状に集積するメカニズムに関して考察し、国際学術誌Langmuirに報告した。このナノ微粒子の集積メカニズムは、気泡周りに発生するマランゴニ対流によってナノ粒子が気泡の界面に移動し、気泡が創りだす三相界面(固体基板表面と気液界面が接する領域)に集積していると考えた。これにより、表面集積の位置や数を制御しながら溶液プロセスでのナノマテリアルのリング状集積が可能になり、気泡の新しい利用法を提案する事ができた。また、気泡をテンプレートとしている事、及び気泡はレーザー光照射を止めると瞬時に消滅する事から、実質、テンプレートの必要ない、ナノ材料集積方法として捉える事ができる。また、このメカニズムから、分子も三相界面に集積する事がわかった。その分子集積の応用として、台湾国立交通大学、増原宏教授の研究グループと共同研究を行った。グリシンの過飽和水溶液中において気泡を生成させると、気泡界面にグリシンの高濃度溶液が生成し、レーザー光の照射を止めると、高濃度溶液から結晶が成長する様子が確認された。このことから、レーザー光に誘起された気泡は位置を制御した結晶化技術の一つとして利用可能である事が示唆された。これらの研究は国際学術誌ACS Applied Materials & Interfacesに報告した。以上の研究により、レーザー光によって誘起された微小気泡の性質を理解し、新規利用法を見出す事ができた。
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