研究概要 |
本研究では,プラズマ技術の医療・バイオ応用として,プラズマ照射を用いた微生物及び細胞の活性制御を目的としている.具体的にはプラズマ照射を行う事で細胞増殖の促進・抑制を行い,動物細胞では臓器移植分野での応用を.植物細胞では収量の増加,発芽時期の制御等を実現する.今年度は,大気圧プラズマ照射装置を作製し,植物種子への照射実験を試みた.実験では大気圧誘電体バリア放電を,また増殖促進に寄与する活性種を同定するために容量結合型放電を用いた.使用した種子は成長の早い貝割れ大根の種子である.種子に大気圧プラズマを照射した場合,未照射と比較し同時間栽培した結果,最大で約1.2倍長さに差が見られ,早く成長する事が分かった.成長促進に寄与する活性種の同定実験では,酸素プラズマ及び窒素プラズマを使用した.酸素プラズマ照射の場合,大気圧プラズマ照射と同様に30分の照射で最大約1.6倍成長が促進されたが,窒素プラズマでは確認されなかった.また,酸素プラズマ中に生じるイオン,光を遮断して照射した場合にも成長促進が見られた.プラズマ照射前後の種子表面をSEM観察及びFTIR-ATR法を用いて計測したところ,最大120分照射した場合でも,空隙等は確認されず,FTIRスペクトルのピークの変化も照射前後で確認されなかった.これらの結果は,プラズマ照射による成長促進では,プラズマ中に生じる活性酸素種が重要である事を示しており,従来の薬剤等を用いる促進技術と比較し簡易であり有効である事を明らかにした.
|